CAPMとβ — 「市場への感応度」だけがリターンを決める
📅 2026年9月12日 公開
「リスクを取れば報われる」は半分だけ正しい
投資の世界で最も有名な命題の一つ——ハイリスク・ハイリターン。しかしCAPM(資本資産価格モデル)はこれをより正確に言い直します。報われるのは、分散投資で消せないリスクだけだと。
過去問10年分析(当サイトによる独自集計)では、CAPMは例年ほぼ7点前後で安定して推移しており、出題の型が最も安定した分野の一つです。過去問反復の効果が最大の領域でもあります。
2種類のリスク — 消せるものと消せないもの
ポートフォリオの分散で見たとおり、相関の低い資産を組み合わせるとリスクは減りました。しかし、いくら銘柄を増やしてもゼロにはならない部分が残ります。
| 種類 | 別名 | 内容 | 分散投資で |
|---|---|---|---|
| 個別リスク | 非市場リスク・固有リスク | 特定企業の不祥事、新製品の失敗など | 消せる |
| 市場リスク | システマティック・リスク | 景気変動、金利、市場全体の動き | 消せない |
CAPMの主張はこうです。消せるリスクを取っても報酬は与えられない(分散すればいいだけだから)。報酬が与えられるのは、消せない市場リスクを負担する分だけ。そして、ある資産が市場リスクをどれだけ負っているかを測る指標がβ(ベータ)です。
βとは何か — 市場への感応度
βは、市場全体が1%動いたときに、その資産が平均的に何%動くかを表します。定義式は
$$\beta_i = \frac{\mathrm{Cov}(R_i, R_M)}{\sigma_M^2}$$
市場ポートフォリオとの共分散を、市場の分散で割ったものです。
- β = 1: 市場と同じ動き(市場ポートフォリオ自身のβは1)
- β > 1: 市場より大きく動く(景気敏感株など)
- β < 1: 市場より動きが小さい(ディフェンシブ銘柄など)
- β = 0: 市場と無関係(安全資産のβは0)
証券市場線(SML)— CAPMの結論
CAPMの核心はこの1本の式です。
$$E[R_i] = r_f + \beta_i \left( E[R_M] - r_f \right)$$
期待リターン=無リスク金利+β×市場リスクプレミアム。資産の期待リターンを決めるのはβだけ——標準偏差(トータルリスク)ではありません。ここがCAPMの最も重要な主張です。
数値例: 無リスク金利1%、市場の期待リターン7%(=リスクプレミアム6%)のとき、
| 資産 | β | 期待リターン |
|---|---|---|
| 安全資産 | 0 | 1 + 0×6 = 1% |
| ディフェンシブ株 | 0.6 | 1 + 0.6×6 = 4.6% |
| 市場ポートフォリオ | 1.0 | 1 + 1×6 = 7% |
| 景気敏感株 | 1.5 | 1 + 1.5×6 = 10% |
資本市場線(CML)は横軸が標準偏差で、効率的ポートフォリオだけが乗る直線。
証券市場線(SML)は横軸がβで、すべての資産・ポートフォリオが(均衡では)この線上に乗ります。
「非効率なポートフォリオはCMLの下方にあるが、SML上にはある」——この違いを説明できれば、CAPMの正誤問題はほぼ落としません。
試験で問われる周辺論点
- βの計算: 共分散から求める形と、回帰分析の傾きとして与えられる形の両方
- リスクの分解: トータルリスク(分散)を市場リスク \(\beta^2\sigma_M^2\) と個別リスクに分解する計算
- ポートフォリオのβ: 構成資産のβの加重平均になる(この線形性は計算問題で多用されます)
- ジェンセンのα: 実績リターンがSMLの予測をどれだけ上回ったか。運用評価の指標
- シャープ比・トレイナー比: 前者は標準偏差で、後者はβで超過リターンを割る
- 末尾の理論正誤: 市場の効率性、アノマリー、サバイバーシップ・バイアスなど
学習への落とし込み
CAPMは投資理論 理論編 第3章で扱います。出題パターンが最も安定している分野なので、類題トレーニングで年度をまたいで解くと「同じ型」であることが体感できるはずです。ここは確実に7点取りにいきましょう。明日は偉人伝、ジョン・メイナード・ケインズです。
📖 あわせて学ぶ(無料講義・動画)
📚 参考文献・参考リンク
- 小林孝雄・芹田敏夫『新・証券投資論Ⅰ 理論篇』日本経済新聞出版
- Wikipedia「資本資産価格モデル」
- 当サイト類題データベース(2016〜2025年度・753問)の集計