会計 ― 付録(参考コンテンツ)

会計基準の新旧対比 ― 古い過去問を解くときの注意点

リース/期中財務報告/収益認識 ― 旧基準時代の過去問を解くときに「どこが今と違うのか」を整理した参考ページです。

KKT「会計」では、近年いくつかの会計基準が大きく改定されました。本サイトの講義(Ch1〜Ch12)は最新基準に揃えていますが、過去問のなかには旧基準を前提とした問題が残っており、現行基準のままで読むと違和感が出るものがあります。
このページは、古い過去問・古い問題集に取り組む方の参考として、新旧の違いを3つのトピックに絞って整理したものです。本試験に新たに出ることはありませんが、過去問演習中に「あれ?」となった時の即席リファレンスとしてご活用ください。

📌 本付録で扱うトピック

  1. リース会計 ― 二分法から使用権モデル(基準34号)へ
  2. 期中財務報告 ― 四半期報告書から半期報告書へ
  3. 収益認識 ― 値引・返品・割戻の取扱い
  4. 本サイトで「出題対象外」とした過去問の一覧

1. リース会計(基準13号 → 基準34号)

2024年度から、企業会計基準委員会(ASBJ)の「リースに関する会計基準」(企業会計基準第34号、2024年9月公表)が原則として2027年4月1日以降開始事業年度から適用されます(早期適用可)。これにより借手の処理が大きく変わりました。

論点旧基準(基準13号)新基準(基準34号・使用権モデル)
リースの分類 ファイナンス・リース/オペレーティング・リースの二分法 借手は単一区分(短期・少額を除き全てオンバランス)
貸手は二分法を継続
計上科目(借手) 「リース資産」「リース債務」 使用権資産」「リース負債
取得価額の決定 所有権移転外の場合、貸手の購入価額(明らかな場合)または借手の見積現金購入価額とリース料総額の割引現在価値のいずれか低い方 未払リース料の割引現在価値(利子抜き法が原則)。重要性が乏しい場合は利子込み法も可
割引率 貸手の計算利子率(不明なら借手の追加借入利子率) (a) 貸手の計算利子率(適切な場合)
(b) 借手の追加借入利子率(多くの場合こちら)
オペレーティング・リース(借手) 賃貸借処理(オフバランス) 原則オンバランス化(使用権資産・リース負債)
例外:短期リース(≦12か月)・少額リース(≦300万円等)は賃貸借処理可
所有権移転 / 移転外の区分 所有権移転条項・割安購入選択権・特別仕様で区別、移転時は経済的耐用年数で償却 使用権資産はリース期間にわたって定額法で償却(残価ゼロ)
過去問で「リース資産」「リース債務」「所有権移転外ファイナンス・リース」という言葉が出てきたら、旧基準(基準13号)前提の問題だと思ってください。新基準では、これらは「使用権資産」「リース負債」に名称が変わり、二分法そのものが廃止されています。

ただし「リース料総額の割引現在価値を求めて、見積現金購入価額と比べる」「実効利子率を特定して利息法で配分する」といった計算技法そのものは、新基準でも本質的に同じ手順が使われます。旧過去問の計算練習は、新基準の理解にも十分役立ちます
旧基準の典型的な計算手順(旧過去問に出てくる形)
① リース料総額の割引現在価値(追加借入利子率で割引)と見積現金購入価額の低い方を取得原価とする
② リース料総額 ÷ 取得原価 = 年金現価係数を算定し、現価率表から実効利子率を特定
③ 実効利子率で利息法配分(毎期、リース債務残高 × 実効利子率 = 利息部分/残額が元本返済)
新基準では:①の「低い方を取る」操作は不要。割引現在価値そのものがリース負債(使用権資産)の計上額。

詳しい新基準の解説は 第8章 5節「リース会計」 をご覧ください。新基準の利子抜き法・利子込み法の比較や使用権資産の減価償却まで11設例で解説しています。

2. 期中財務報告(四半期報告書 → 半期報告書)

2024年4月以降開始事業年度から、金融商品取引法上の四半期報告制度が廃止され、半期報告書制度に移行しました。あわせて教科書でも「四半期特有の会計処理」という見出しが「期中特有の会計処理」に改訂されています。

論点旧制度(〜2024/3)新制度(2024/4〜)
金商法上の開示書類 四半期報告書(第1・第2・第3四半期) 半期報告書(上半期のみ)。第1・第3四半期の開示は取引所規則の四半期決算短信に一本化
提出期限 四半期末から45日以内 上半期末から45日以内
対象期間 第4四半期を除く各四半期末(年3回開示) 上半期末(年1回開示)
特有の会計処理の名称 「四半期特有の会計処理」 期中特有の会計処理
税金費用の見積方法 税引前四半期純利益 × 年間見積実効税率 税引前純利益 × 年間見積実効税率
(「四半期」の語を削除、計算式は実質同じ)
第3四半期で省略可だった項目 キャッシュ・フロー計算書(年度期首からの累計期間) 論点自体が消失(第3四半期報告書がなくなったため)
過去問の「四半期報告書は四半期末から45日以内」という記述は、現行制度では「半期報告書は上半期末から45日以内」と読み替えるとほぼ等価になります。

2018年問1(3)のような「四半期報告書」を「半期報告書」に、「第4四半期を除く各四半期末」を「上半期末」に置換すると、問題が現行制度でも成立するケースがあります。一方、2017年問2(5)のような「第3四半期で省略可能なもの」を問う問題は、第3四半期報告書そのものが廃止されたため、現行ではそもそも問えません。

新制度における「期中特有の会計処理」(原価差異の繰延処理・年間見積税率法)の詳細は 第12章 6節「遡及処理と期中の財務報告」 をご覧ください。

3. 収益認識基準と「値引・返品・割戻」の取扱い

2021年4月以降開始事業年度から、企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」が適用されています。これに伴い、値引・返品・割戻の会計処理も大きく変わりました。

論点旧扱い(〜収益認識基準適用前)新扱い(収益認識基準・29号)
基本的な考え方 販売時点で計上した売上高・売掛金を、事後的に減額する 取引価格に変動対価として見積りを反映し、当初の収益計上時点で控除
売上値引(品質不良等での単価切下げ) 事後減額(売上高から控除) 取引価格の変動対価として見積りで反映
返品 返品時に売上を取り消し 返品見込分を返金負債として計上、回収予想分は返品資産として計上
売上割戻(リベート) 事後減額 変動対価として見積りで反映
仕入値引・仕入割戻 棚卸資産の購入代価から控除 原則同様だが、仕訳タイミング・見積りの扱いが厳格化
仕入割引 金利の性質を有するため営業外収益として処理 同様の扱い(金融要素として認識)
「販売時点で計上した収益と売掛金は、値引・返品・割戻といった理由によりその一部が事後的に減額されることがある」という記述は、旧基準前提の表現です。

新基準では、これらは当初の収益計上時点で見積もって控除する建付けに変わっており、「事後減額」という発想自体が縮小しています。古い問題集や過去問でこの表現に出会ったら、旧基準前提の問題と読み替えてください。

新基準の5ステップアプローチ(契約識別→履行義務識別→取引価格決定→配分→収益認識)は 第6章「売上高と売上債権」で詳しく解説しています。

4. 本サイトで「出題対象外」とした過去問

以下の問題は、上記の基準変更により現行基準では成立しないまたは出題されないため、🚧 出題対象外として扱っています。模擬試験では自動的に満点処理され、トレーニングのランダム出題からは除外されます。

出題箇所テーマ区分
2016年 問2(2)売上の事後減額(値引・返品・割戻)収益認識基準
2017年 問2(5)四半期財務諸表(第3四半期の省略可項目)四半期報告廃止
2018年 問1(3)四半期報告書の提出期限(45日)
※「四半期」を「半期」に読み替えれば再利用可
四半期報告廃止
2018年 問4(5)リース債務の支払利息(旧基準・所有権移転)リース基準
2023年 問4(1)ファイナンス・リース債務残高(旧基準・利息法)リース基準
トレーニング 第12問リース会計(ファイナンス/オペレーティング二分法)リース基準
これらの問題は「会計の歴史」を学ぶ参考資料としての価値はあります。とくに、リース会計の計算手順(割引現在価値・実効利子率・利息法配分)の練習問題としては、新基準でも本質的に同じ計算技法が使われるため、計算演習としては有用です。

ただし、本試験では旧基準に基づく問題は出題されないため、用語や論点の暗記は新基準ベースで進めてください。

付録のまとめ

🔑 古い過去問を解くときの3つの注意点

  1. リース問題で「リース資産」「リース債務」「所有権移転外」が出てきたら旧基準(基準13号)の問題。計算手順自体は新基準でも応用可能。
  2. 四半期という用語が出てきたら旧制度。多くの場合「半期」「期中」と読み替えれば現行制度でも成立するが、第3四半期固有の論点は消失。
  3. 「事後減額」「値引・返品・割戻」の論点は、収益認識基準(29号)で「変動対価」概念に変わっている。

本サイトの講義本編(Ch1〜Ch12)は全て最新基準に対応しています。安心して各章を読み進めてください。古い過去問を解く際は、本付録を片手に新旧の対応を確認しながら取り組むのがお勧めです。