ゼロからわかる簿記 ― 第5章

現金と預金 ― 現金過不足・小口現金・当座借越

簿記でいう「現金」は、じつはお札と小銭だけではありません。通貨代用証券・現金過不足・当座預金・当座借越・小口現金を、一つずつ丁寧に整理していきましょう。

「現金」ほど、簿記を学びはじめた方の直感を裏切る言葉はないかもしれません。 わたしたちが日常で「現金」と呼ぶのは、お財布の中のお札と小銭ですよね。 ところが簿記の世界では、受け取った小切手や、郵便局でもらう為替証書まで「現金」として扱う——そんな一見ふしぎなルールが待っています。 さらに、金庫の中身を数えたら帳簿とピッタリ合わない「現金過不足(げんきんかぶそく)」、残高を超えて小切手を振り出せる「当座借越(とうざかりこし)」、少額の支払い専用のお財布を作る「小口現金(こぐちげんきん)」……。 第4章までで仕訳の基本と商品売買を身につけたあなたなら、どれも一つずつ落ち着いて追えば必ず理解できます。 この章のゴールは、「簿記でいう現金・預金とは何を指し、どんな取引でどう仕訳するのか」を、迷わず書けるようになることです。いっしょに整理していきましょう。

🎯 この章でマスターしておきたいこと

📚 本章の流れ

  1. 簿記の「現金」は範囲が広い ―― 通貨と通貨代用証券
  2. 現金過不足 ―― 合わないときの3ステップ
  3. 普通預金・定期預金と、口座別の管理
  4. 当座預金と小切手 ―― 振り出す側・受け取る側
  5. 当座借越 ―― 決算で負債へ振り替える
  6. 小口現金 ―― 定額資金前渡制度
  7. 要点まとめ

1. 簿記の「現金」は範囲が広い ―― 通貨と通貨代用証券

1.1 「現金」勘定が扱うもの

まず、いちばん大事なところから。簿記でいう現金(げんきん)とは、お札や硬貨だけではありません。すぐに(そのまま銀行や郵便局に持ち込めば)通貨に換えられる証券も、まとめて「現金」勘定で処理します。この、通貨の代わりになる証券のことを通貨代用証券(つうかだいようしょうけん)といいます。

簿記上の現金の範囲(通貨と通貨代用証券)の一覧図
図 5-1 簿記上の「現金」の範囲。お札・硬貨(通貨)に加えて、通貨代用証券もこの現金勘定で処理します。

通貨代用証券の代表選手は、次のようなものです。名前は少しむずかしそうですが、どれも「金融機関に持って行けばすぐお金になる紙」だとイメージすれば十分です。

とても大切な注意点が1つあります。同じ「小切手」でも、自分(当社)が振り出した小切手は現金ではありません。自分が小切手を振り出したときは、あとで学ぶ当座預金が減ります。「現金」として扱うのは、あくまで他人(取引先)が振り出した小切手を受け取ったときだけ。ここは混同しやすいので、「他人振出し=現金」「自己振出し=当座預金」とセットで覚えてしまいましょう。

Q. 次の(a)〜(d)のうち、簿記上の「現金」勘定で処理するものはどれでしょうか。
(a) 商品を売り、代金として取引先が振り出した小切手を受け取った
(b) 送金小切手を受け取った
(c) 当社の普通預金口座に振り込まれた
(d) 郵便局で普通為替証書を受け取った

A.

ポイントは「その紙を金融機関に持って行けば、すぐ通貨になるか?」という問いです。(a)(b)(d)はいずれも Yes なので現金。(c)は最初から預金への入金なので、現金ではなく普通預金として記録します。

「小切手や為替証書まで現金に含めるなんて、ややこしい」と感じたかもしれませんね。でも実務では、受け取った小切手をすぐ銀行に持ち込まず、しばらく手元に置いておくことがよくあります。そのあいだ、手元にある小切手はお札とほぼ同じ「いつでもお金になるもの」。だから現金として管理するほうが自然なのです。理屈で納得しておくと、丸暗記よりずっと忘れにくくなりますよ。

2. 現金過不足 ―― 合わないときの3ステップ

2.1 帳簿と実際が合わない、そのときどうする?

会社では定期的に、金庫の中の現金を実際に数えて、帳簿上の現金残高と実際の有高(ありだか)が一致しているかを確認します。ところが、レジの打ちまちがいや記帳もれなどで、両者が食いちがうことがあります。このズレを一時的に受け止めておくための勘定が現金過不足(げんきんかぶそく)です。

ここで大事なのは、現金過不足の処理は1回では終わらないということ。次の図のように、①発生時 → ②原因判明時 → ③決算時の3ステップで進みます。

現金過不足の3ステップ(発生時・原因判明時・決算時)のフロー図
図 5-2 現金過不足の3ステップ。まずズレを現金過不足で受け止め、原因が分かれば正しい科目へ、最後まで分からなければ決算で雑損・雑益に振り替えます。

2.2 ステップ①:発生時 ―― まず「現金過不足」で受け止める

ポイントは、実際の現金を正しい金額に合わせること。帳簿より実際が少なければ現金を減らし、多ければ現金を増やします。相手科目は、原因がまだ分からないので、いったん現金過不足で受けておきます。

たとえば、帳簿残高は50,000円なのに、実際に数えたら47,000円しかなかった(3,000円不足)としましょう。実際に合わせて現金を3,000円減らします。

(借)現金過不足 3,000 / (貸)現金 3,000

逆に、実際のほうが多かった(過剰だった)ときは、現金を増やして貸方に現金過不足を置きます。「実際に合わせる」——これさえ守れば、借方・貸方で迷いません。

Q. 現金の帳簿残高は80,000円だが、実際に数えたら83,000円あった(3,000円の過剰)。発生時の仕訳を書いてください。

A. 実際(83,000円)に合わせるため、現金を3,000円増やします。相手はまだ原因不明なので現金過不足です。
(借)現金 3,000 / (貸)現金過不足 3,000
借方・貸方とも3,000円で一致。過剰のときは現金が借方(増加)、現金過不足が貸方に来ます。

2.3 ステップ②:原因判明時 ―― 正しい科目へ振り替える

あとで原因が分かったら、現金過不足を消して、本来の正しい科目に置きかえます。さきほどの「3,000円不足」の例で、調べたところ2,000円は通信費(切手代)の記帳もれだと判明したとしましょう。

(借)通信費 2,000 / (貸)現金過不足 2,000

発生時に借方へ置いた現金過不足を、今度は貸方に置いて打ち消して(相殺して)います。これで現金過不足の残高は、3,000 − 2,000 = 1,000円(借方)だけ残ります。

2.4 ステップ③:決算時 ―― 残りは雑損・雑益へ

決算日を迎えても原因が分からずに残ってしまった現金過不足は、そのままにできません。次のように振り替えて、現金過不足をゼロにします。

さきほどの例では、原因不明のまま1,000円(借方)が残っていました。決算でこれを雑損に振り替えます。

(借)雑損 1,000 / (貸)現金過不足 1,000

ここまでの3ステップを、1枚の仕訳表で並べてみましょう。同じ現金過不足勘定が、発生時は借方、判明時と決算時は貸方に現れ、最後にきれいに消えていくのが見えるはずです。

現金過不足の一連の仕訳(発生・判明・決算)の仕訳表
図 5-3 現金過不足の一連(不足のケース)。①発生で3,000円を受け止め、②2,000円は通信費と判明、③残り1,000円を決算で雑損へ。現金過不足は最終的に残高ゼロになります。
決算のときに、原因が分からないからといっていきなり雑損・雑益で処理してよいわけではありません。順番はあくまで「まず現金過不足で受ける → 分かった分は正しい科目へ → 最後まで残った分だけ雑損・雑益」です。とくに、決算日にその場で不一致が判明したような場合は、現金過不足を経由せず直接雑損・雑益とすることもありますが、まずは基本の3ステップを型として身につけましょう。
「雑損」「雑益」の「雑(ざつ)」は、ほかのどの科目にも当てはまらない“その他”という意味です。原因が最後まで分からなかったズレの受け皿、というわけですね。なお、雑損は費用(P/Lの借方)、雑益は収益(P/Lの貸方)です。第1章で学んだ5要素のホームポジションを思い出すと、「不足=損=費用は借方」「過剰=益=収益は貸方」と、位置まで自然に納得できますよ。

3. 普通預金・定期預金と、口座別の管理

3.1 預金にもいろいろな種類がある

会社は現金だけでなく、銀行の預金も使います。日商簿記3級で登場する主な預金は、次の3つです。

たとえば「現金100,000円を普通預金に預け入れた」なら、資産である普通預金が増え、資産である現金が減ります。

(借)普通預金 100,000 / (貸)現金 100,000

3.2 銀行ごとに勘定を分ける ―― 口座別管理

会社が複数の銀行に口座を持っていると、「どの銀行にいくらあるのか」を分けて管理したくなります。そこで実務では、「普通預金A銀行」「普通預金B銀行」のように、勘定科目に銀行名を付けて口座別に記録することがあります。日商簿記3級でもこの形式が出題されます。

口座別に勘定を分ける仕訳の例(普通預金A銀行・B銀行)
図 5-7 口座別管理の例。売上代金がA銀行に入金され、その一部をB銀行へ振り替えています。銀行名まで含めて1つの勘定科目として扱います。

図5-7の下の行、「A銀行からB銀行へ150,000円を振り替えた」という取引に注目してください。増えたB銀行(資産)を借方、減ったA銀行(資産)を貸方に書きます。同じ「普通預金」でも、銀行が違えば別々の勘定として扱うのがポイントです。

Q. 買掛金80,000円を支払うため、B銀行の普通預金口座から振り込んだ(口座別管理を採用)。仕訳を書いてください。

A. 買掛金(負債)が減り、普通預金B銀行(資産)が減ります。
(借)買掛金 80,000 / (貸)普通預金B銀行 80,000
「どの口座から払ったか」を勘定科目名にはっきり残すのが口座別管理です。借方・貸方とも80,000円で一致しています。

4. 当座預金と小切手 ―― 振り出す側・受け取る側

4.1 当座預金とは

当座預金(とうざよきん)は、小切手(こぎって)を使って支払いをするための、商売専用の預金です。利息は付きませんが、そのぶん多額の支払いを小切手1枚で安全に済ませられる便利さがあります。もちろん資産です。

小切手とは、「この紙を銀行に持って行けば、わたしの当座預金からお金を払います」という支払いの約束を書いた紙です。小切手を作って相手に渡すことを「振り出す(ふりだす)」といいます。

当座預金と小切手の仕組み(振出人・受取人・銀行)の図
図 5-4 小切手の仕組み。振り出した側は当座預金が減り、他人振出しの小切手を受け取った側は現金が増えます。同じ1枚の小切手でも、立場によって仕訳が変わります。

4.2 小切手を「振り出す」側の仕訳

当社が支払いのために小切手を振り出すと、その分だけ当座預金が減ります。たとえば「買掛金200,000円を支払うため、小切手を振り出した」なら、こうです。

(借)買掛金 200,000 / (貸)当座預金 200,000

実際に銀行口座からお金が引き落とされるのは、相手が小切手を銀行に持ち込んだ後ですが、簿記では小切手を振り出した時点で当座預金を減らして記録します。ここは決まりとして覚えてしまいましょう。

4.3 小切手を「受け取る」側の仕訳

いっぽう、当社が他人(取引先)の振り出した小切手を受け取ったときは、第1節で学んだとおり現金の増加として処理します。たとえば「商品を売り上げ、代金150,000円を先方振出しの小切手で受け取った」なら、こうです。

(借)現金 150,000 / (貸)売上 150,000

Q. 同じ「小切手」でも立場で仕訳が変わります。次の2つを書き分けてください。
(1) 商品300,000円を仕入れ、代金は小切手を振り出して支払った。
(2) 商品300,000円を売り上げ、代金は先方が振り出した小切手で受け取った。

A.

(1) 自分が振り出す → 当座預金が減少。
(借)仕入 300,000 / (貸)当座預金 300,000

(2) 他人振出しを受け取る → 現金が増加。
(借)現金 300,000 / (貸)売上 300,000

どちらも借方・貸方は300,000円で一致。「振り出す=当座預金」「受け取る(他人振出し)=現金」の対比を、この2問でしっかり固めましょう。

発展的な話を1つ。当社が受け取る小切手が、じつは以前に自分が振り出した小切手(自己振出小切手)だった、というケースがあります。この場合は現金ではなく、振り出したときに減らした当座預金を元に戻す(借方に当座預金)処理をします。少しひねった論点なので、まずは「他人振出し=現金/自己振出し=当座預金」という基本の対応をしっかり握っておけば大丈夫です。

5. 当座借越 ―― 決算で負債へ振り替える

5.1 残高を超えて小切手を振り出す?

ふつう、当座預金の残高を超える小切手は決済できません。ところが、あらかじめ銀行と当座借越契約(とうざかりこしけいやく)を結んでおくと、残高を超えた分を、一定額まで銀行が立て替えてくれるようになります。この立て替えてもらっている状態を当座借越といいます。要するに銀行からの一時的な借金ですね。

たとえば、当座預金の残高が120,000円しかないのに、150,000円の小切手を振り出したとします。日々の記帳では、当座預金勘定をそのまま減らして記録します。

(借)買掛金 150,000 / (貸)当座預金 150,000

この結果、当座預金勘定は貸方残高30,000円(=マイナスの状態)になります。資産である当座預金が貸方残高になっているのは不自然ですね。そこで登場するのが、決算での振替です。

5.2 決算時に「当座借越」(負債)へ振り替える

決算日に当座預金が貸方残高(マイナス)になっているときは、そのマイナス分を当座借越勘定(負債)へ振り替えます。これは第1章で学んだ「借入金」と同じ、あとで返す義務=負債です。

当座借越の決算振替仕訳(当座預金の貸方残高を当座借越へ)
図 5-5 当座借越の決算振替。当座預金の貸方残高(この例では50,000円)を、負債である当座借越へ振り替えます。これで当座預金勘定はゼロに戻ります。

図5-5では、当座預金の貸方残高50,000円を当座借越に振り替えています。借方に当座預金を置くことで、貸方残高だった当座預金がゼロに戻り、代わりに当座借越(負債)50,000円が計上されます。この当座借越は、翌期首に逆の仕訳(借方:当座借越/貸方:当座預金)で元に戻します。これを再振替仕訳(さいふりかえしわけ)といい、経過勘定などとあわせて第11章でくわしく扱います。

本コースでは、当座借越を決算のときにまとめて負債へ振り替える方法(一勘定制)で説明しています。教科書によっては、日々の取引の段階から「当座」と「当座借越」の2つの勘定を使い分ける方法(二勘定制)を紹介することもありますが、まずはこの決算振替方式をしっかり身につければ十分です。1つの型を確実にできるようにしてから、余裕があれば別の方法にも触れる——これが遠回りに見えて最短の学び方です。

Q. 決算日、当座預金勘定が貸方残高40,000円となっていた。決算で必要な振替仕訳を書いてください。

A. 当座預金の貸方残高(マイナス)を、負債の当座借越へ振り替えます。
(借)当座預金 40,000 / (貸)当座借越 40,000
借方に当座預金を置くと貸方残高が打ち消されてゼロになり、代わりに当座借越(負債)40,000円が残ります。借方・貸方とも40,000円で一致しています。

6. 小口現金 ―― 定額資金前渡制度

6.1 少額の支払い専用のお財布

切手代・お茶代・電車賃といったちょっとした支払いまで、いちいち経理担当者が当座預金から払っていたら大変です。そこで、各部署の小口係(こぐちがかり)に少額の現金をあらかじめ渡しておき、日々の細かい支払いはそこから済ませてもらう仕組みが使われます。この手元の少額現金を小口現金(こぐちげんきん)といい、資産です。

もっとも一般的なのが定額資金前渡制度(ていがくしきんまえわたしせいど)、別名インプレスト・システムです。あらかじめ「毎週◯円」と一定額を決めておき、使った分だけを定期的に補給して、常に元の一定額に戻すのが特徴です。流れを図で見てみましょう。

小口現金(定額資金前渡制度)の流れ 前渡し・支払い・報告・補給
図 5-6 定額資金前渡制度の流れ。①一定額を前渡し → ②小口係が細かい支払い → ③使った額を報告 → ④使った分だけ補給、を繰り返します。

6.2 前渡し・報告・補給の仕訳

順を追って仕訳を見ていきます。まず、小口係に一定額を前渡しします。ここでは「小切手を振り出して30,000円を前渡しした」としましょう。小口現金(資産)が増え、当座預金(資産)が減ります。

(借)小口現金 30,000 / (貸)当座預金 30,000

1週間後、小口係から「通信費2,000円、旅費交通費3,000円、消耗品費1,500円を支払いました」と報告を受け、同額を小切手で補給したとします。報告によって使った費用が確定し、同時に使った分(合計6,500円)を補給して小口現金を元の30,000円に戻します。

(借)通信費 2,000/旅費交通費 3,000/消耗品費 1,500 / (貸)当座預金 6,500

「あれ、小口現金が出てこない?」と思ったかもしれませんね。報告と補給を同時に行う場合、使った分(小口現金の減少)と補給(小口現金の増加)が同額で打ち消し合うため、小口現金勘定は動かさず、費用の相手を直接ぜんぶ当座預金にできるのです。借方合計 2,000+3,000+1,500 = 6,500円、貸方 6,500円で一致します。

Q. 定額資金前渡制度を採用。小口係から「旅費交通費4,000円、消耗品費2,500円を支払った」と報告を受け、ただちに同額の小切手を振り出して補給した。報告と補給の仕訳を書いてください。

A. 報告と補給が同時なので、使った費用を借方に並べ、貸方は補給の当座預金でまとめます。
(借)旅費交通費 4,000/消耗品費 2,500 / (貸)当座預金 6,500
借方合計 4,000+2,500 = 6,500円、貸方 6,500円で一致。補給後、小口現金は元の一定額に戻ります。

補給を「後日」に回す場合は、報告時に「(借)各費用 / (貸)小口現金」で小口現金をいったん減らし、補給時に「(借)小口現金 / (貸)当座預金」で戻す、という2回に分けた仕訳になります。報告と補給が同時なら1本にまとめられ、別々なら2本に分かれる——どちらも最終的な残高は同じです。問題文の「ただちに補給した」「後日補給した」という言葉を見て、どちらのパターンかを判断できるようにしておきましょう。

💡 第5章 要点まとめ

おつかれさまでした。現金・預金まわりは、勘定科目こそ多いものの、「実際に合わせる」「振り出す側か受け取る側か」「決算で振り替える」という共通の考え方でつながっています。ここが押さえられれば、会社のお金の出入りをかなり正確に記録できるようになりました。次の第6章「手形と電子記録債権」では、小切手と似ているようで少しちがう「手形(てがた)」という支払いの道具、そして近年広がっている電子記録債権(でんさい)を学びます。「支払いの約束を紙や電子データで記録する」という、この章の延長線上にある話です。引き続き、一歩ずつ進んでいきましょう。

✍️ 演習(クリックで解答表示)

第5章で学んだ「現金の範囲」「現金過不足」「当座預金・小切手」「当座借越」「小口現金」を、実際に手を動かして確認しましょう。まずは自分で仕訳を書いてから、解答を開いてくださいね。借方合計=貸方合計になっているかも、そのつど確かめる習慣をつけましょう。

問 1 次の(a)〜(f)のうち、簿記上の「現金」勘定で処理するものをすべて選んでください。
(a) 硬貨と紙幣 (b) 取引先が振り出した小切手 (c) 当社が振り出した小切手 (d) 送金小切手 (e) 普通為替証書 (f) 普通預金への振込入金

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現金として扱うのは、通貨と通貨代用証券です。

現金で処理するもの:(a)、(b)、(d)、(e)

(a) 通貨(紙幣・硬貨)。(b) 他人振出しの小切手は通貨代用証券。(d) 送金小切手、(e) 普通為替証書も通貨代用証券です。

一方、(c) 当社(自己)が振り出した小切手は当座預金の減少であって現金ではありません。(f) は普通預金で処理します。

問 2 次の取引の仕訳を書いてください。
(1) 商品200,000円を売り上げ、代金は先方が振り出した小切手で受け取った。
(2) 買掛金180,000円を支払うため、小切手を振り出した。

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(1) 他人振出しの小切手を受け取った → 現金の増加。
(借)現金 200,000 / (貸)売上 200,000

(2) 自分で小切手を振り出した → 当座預金の減少。
(借)買掛金 180,000 / (貸)当座預金 180,000

同じ「小切手」でも、受け取るか振り出すかで現金と当座預金に分かれます。どちらも借方・貸方が一致しています。

問 3 次の現金過不足に関する一連の取引の仕訳を、①②③それぞれ書いてください。
① 現金の帳簿残高は60,000円だが、実際に数えたら55,000円しかなかった(5,000円不足)。
② 上記のうち、3,000円は消耗品費の記帳もれと判明した。
③ 決算日となったが、残りの原因は判明しなかった。

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① 実際(55,000円)に合わせて現金を5,000円減らし、相手は現金過不足で受けます。
(借)現金過不足 5,000 / (貸)現金 5,000

② 判明した3,000円を正しい科目(消耗品費)へ振り替え、現金過不足を打ち消します。
(借)消耗品費 3,000 / (貸)現金過不足 3,000

③ 残り 5,000 − 3,000 = 2,000円(借方残高)を、決算で雑損へ。
(借)雑損 2,000 / (貸)現金過不足 2,000

これで現金過不足勘定の残高はゼロになります。

問 4 現金の帳簿残高より実際有高のほうが2,000円多かった(過剰)。後日、そのうち2,000円全額が受取手数料の記帳もれと判明した。①発生時、②判明時の仕訳をそれぞれ書いてください。

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① 実際に合わせて現金を2,000円増やし、相手を現金過不足(貸方)で受けます。
(借)現金 2,000 / (貸)現金過不足 2,000

② 原因が受取手数料と判明。貸方にあった現金過不足を借方に置いて打ち消し、受取手数料(収益)を貸方に計上します。
(借)現金過不足 2,000 / (貸)受取手数料 2,000

今回は全額の原因が判明したので、決算で雑益に振り替える残りはありません。過剰のときは現金過不足が貸方スタートになる点が、不足のケースとの違いです。

問 5 次の取引の仕訳を書いてください(普通預金は口座別に管理している)。
(1) A銀行の普通預金口座に、売掛金250,000円が振り込まれた。
(2) A銀行の普通預金からB銀行の普通預金へ100,000円を振り替えた。

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(1) 売掛金(資産)が減り、普通預金A銀行(資産)が増えます。
(借)普通預金A銀行 250,000 / (貸)売掛金 250,000

(2) 増えたB銀行を借方、減ったA銀行を貸方に。
(借)普通預金B銀行 100,000 / (貸)普通預金A銀行 100,000

同じ普通預金でも、銀行名を付けて別々の勘定として扱うのが口座別管理です。

問 6 決算日、当座預金勘定が貸方残高70,000円となっていた。当社は銀行と当座借越契約を結んでいる。決算で必要な振替仕訳を書いてください。また、この当座借越は5要素のどれにあたりますか。

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当座預金の貸方残高(マイナス)を、当座借越へ振り替えます。
(借)当座預金 70,000 / (貸)当座借越 70,000

借方に当座預金を置くことで貸方残高がゼロに戻り、代わりに当座借越70,000円が残ります。

当座借越は「あとで返す義務」なので負債です。第1章で学んだ借入金の仲間だと考えると分かりやすいですね。

問 7 定額資金前渡制度を採用している。次の取引の仕訳を書いてください。
(1) 小口係に、小切手を振り出して40,000円を前渡しした。
(2) 小口係から「旅費交通費5,000円、通信費2,000円、消耗品費1,000円を支払った」と報告を受け、ただちに同額の小切手を振り出して補給した。

解答を見る

(1) 小口現金(資産)が増え、当座預金(資産)が減ります。
(借)小口現金 40,000 / (貸)当座預金 40,000

(2) 報告と補給が同時なので、使った費用を借方に並べ、貸方は補給の当座預金でまとめます(小口現金は動かしません)。
(借)旅費交通費 5,000/通信費 2,000/消耗品費 1,000 / (貸)当座預金 8,000

借方合計 5,000+2,000+1,000 = 8,000円、貸方 8,000円で一致。補給後、小口現金は元の40,000円に戻ります。

問 8 次の(a)〜(d)の説明について、正しければ○、まちがっていれば×を付け、×の場合は正しい内容を書いてください。
(a) 当社が振り出した小切手を相手に渡したとき、当社は現金を増やす。
(b) 現金過不足は、決算日まで原因が分からなければ、不足分は雑益、過剰分は雑損に振り替える。
(c) 当座借越は負債である。
(d) 定額資金前渡制度では、使った金額にかかわらず毎回一定額を追加で渡す。

解答を見る

(a) ×。自分が小切手を振り出したときは当座預金を減らすのが正しい処理です。現金の増加になるのは、他人振出しの小切手を受け取った側です。

(b) ×。逆です。不足分(借方残高)は雑損(費用)、過剰分(貸方残高)は雑益(収益)に振り替えます。

(c) ○。当座借越は銀行からの一時的な借入れであり、あとで返す義務なので負債です。

(d) ×。定額資金前渡制度では、使った分だけを補給して、常に元の一定額に戻します。使った額と無関係に一定額を追加するわけではありません。

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