伊藤元重『入門経済学』— 経済を「物語」で学べる定番教科書と、その著者を知る
📅 2026年8月15日 公開
経済学を「日本語で」教えてくれる教科書
アクチュアリー試験「経済」分野の指定教科書は、伊藤元重『入門経済学』(日本評論社)です。経済学の教科書というと数式とグラフの羅列を想像するかもしれませんが、本書は違います。身近な経済の出来事を入り口に、ミクロ経済学からマクロ経済学までを「読み物として面白い日本語」で貫く——文系・理系を問わず、経済学の最初の一冊として長く支持されてきた定番書です。
著者・伊藤元重氏 — 「経済を語れる」経済学者
著者の伊藤元重(いとう・もとしげ)氏は、東京大学名誉教授。専門は国際経済学で、東京大学で長年教鞭をとったのち、学習院大学でも教授を務めました。政府の経済財政諮問会議の民間議員など政策の現場にも深く関わり、テレビや新聞の経済解説でおなじみの存在でもあります。
伊藤氏の持ち味は、なんといっても「難しいことを、専門用語に逃げずに説明する力」です。本書でもその筆致は健在で、抽象的な理論が必ず現実の経済ニュース——価格競争、規制、金融政策——と結びつけて語られます。「経済学は暗記科目ではなく、世の中を読む道具だ」と実感させてくれる教科書です。
『入門経済学』はどんな本か
本書はミクロ経済学とマクロ経済学を1冊でカバーする構成です。前半のミクロでは需要と供給、消費者・生産者の行動、市場の均衡と政策、ゲーム理論まで。後半のマクロではGDP、金融政策、インフレとデフレ、財政といった国全体の経済を扱います。
第4版では高齢化や財政問題など日本経済の現実的なテーマも取り込まれており、「理論を学ぶと、いま日本で起きていることが読めるようになる」という構成が徹底されています。数学的な難易度は抑えめで、微分を使った厳密な導出よりも直感とグラフによる理解を重視しているため、経済学が初めての方でも通読できます。
試験範囲との対応 — 読むべき章と補い方
アクチュアリー試験の経済分野は、本書の内容を基礎としつつ、計算問題としてはもう一段踏み込んだ出題がされます。ただし本書の全編が範囲になるわけではなく、指定されているのはPart 1 の §1〜§4 と §8、Part 2 の §9〜§12です(本記事執筆時点。最新の指定範囲は受験年度の資格試験要領で確認してください)。本サイトの経済講義(全9章)は、この指定範囲を通し番号に振り直した、ミクロ5章+マクロ4章の構成です。
| 本サイトの講義 | 教科書の指定範囲 | 主な内容 |
|---|---|---|
| 第1章(ミクロ) | Part 1 §1 | 需要と供給 |
| 第2章(ミクロ) | Part 1 §2 | 需要曲線と消費者行動 |
| 第3章(ミクロ) | Part 1 §3 | 費用の構造と供給行動 |
| 第4章(ミクロ) | Part 1 §4 | 市場取引と資源配分(余剰分析) |
| 第5章(ミクロ) | Part 1 §8 | ゲームの理論入門 |
| 第6章(マクロ) | Part 2 §9 | 経済をマクロからとらえる(GDP・物価) |
| 第7章(マクロ) | Part 2 §10 | 有効需要と乗数メカニズム |
| 第8章(マクロ) | Part 2 §11 | 貨幣の機能と金融政策 |
| 第9章(マクロ) | Part 2 §12 | マクロ経済政策(IS-LM・総需要/総供給) |
ミクロは §5〜§7 が指定外のため、§4 の次が §8(ゲーム理論)に飛ぶ点に注意してください。
効率的な使い方は、本書で「経済の物語」を頭に入れ、本サイトの講義と類題トレーニングで「計算の型」を身につけるという分業です。弾力性の計算、余剰分析、乗数、IS-LM——試験で手を動かす部分は講義と演習で徹底的に補強してください。
まとめ — 経済ニュースが面白くなる一冊
『入門経済学』を読み終えるころには、日銀の利上げのニュースや価格転嫁の議論が「理論の言葉」で読めるようになっているはずです。それはアクチュアリーとして金利シナリオや経済環境を扱ううえでの、一生モノの土台になります。
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明日は投資理論の指定教科書『新・証券投資論Ⅰ・Ⅱ』を紹介します。配点50点の主戦場、その源流となる教科書です。
※ 厳密に言えば(補注)
- 「計算問題としてはもう一段踏み込んだ出題がされます」は過去問の傾向を踏まえた本サイトの見立てです。出題内容は年度により変動し、計算だけでなく概念理解やグラフの読み取りを問う問題も含まれます。最新の出題形式・範囲は受験年度の試験要領で確認してください。
- 「グラフを自分で描けるかが合否を分けます」は学習法としての強調表現です。合否は計算力・概念理解・時間配分など複数の要因で決まります。グラフを手で描く練習は、曲線のシフトや均衡の変化を理解するための手段として位置づけてください。
📖 あわせて学ぶ(無料講義・動画)
📚 参考文献・参考リンク
- 伊藤元重『入門経済学』第4版、日本評論社
- Wikipedia「伊藤元重」