簿記入門(読み物版)― 第9章

第9章 貸倒れと貸倒引当金

貸倒れの意味、貸倒引当金の設定(差額補充法)、貸倒れの処理、償却債権取立益を基礎から解説します。

第4章で学んだ売掛金(あとで代金を受け取る権利)や、第6章の受取手形。これらは「近いうちにお金になる」とても大切な財産です。でも、世の中には残念な現実があります。取引先が倒産したり、経営が行きづまったりして、代金がまるごと回収できなくなってしまうことがあるのです。これを貸倒れ(かしだおれ)といいます。 この章では、まず「実際に貸倒れが起きたらどう記録するか」を学びます。そのうえで、簿記のなかでも少し大人びた考え方 ―― 「まだ倒れてはいないけれど、将来の貸倒れに前もって備えておく」という貸倒引当金(かしだおれひきあてきん)の発想に踏みこみます。この「見積もって、前もって備える」という考え方は、実はアクチュアリーの仕事の核心にもつながる、とても味わい深いテーマですよ。第8章までの知識を土台に、じっくり進めていきましょう。

🎯 この章でマスターしておきたいこと

📚 本章の流れ

  1. 貸倒れとは何か ―― 回収できない債権と貸倒損失
  2. 貸倒引当金 ―― 「まだ倒れていないが、備えておく」発想
  3. 貸倒引当金の設定 ―― 差額補充法(繰入と戻入)
  4. 貸倒れが起きたとき ―― 前期の債権と当期の債権
  5. 償却債権取立益 ―― あきらめた債権が戻ってきた
  6. 貸借対照表での表示 ―― 売掛金から差し引く
  7. 要点まとめ

1. 貸倒れとは何か ―― 回収できない債権と貸倒損失

1.1 「貸倒れ」ってどういうこと?

会社が商品を掛けで売ると、売掛金という「あとで代金を受け取る権利」が生まれます。ふつうは期日になれば、この売掛金は無事に現金や預金として回収できます。ところが、取引先が倒産してしまったらどうでしょう。お金を払う相手がいなくなり、売掛金という権利はただの紙切れになってしまいます。このように、売掛金や受取手形などの債権が回収できなくなることを貸倒れと呼びます。

「貸したお金が倒れる(回収できずに消える)」とイメージすると、名前の由来もしっくりきますね。貸倒れが起きると、会社はその金額だけ財産(資産)を失います。この失った分は、もうけを減らす原因、つまり費用として記録する必要があります。

1.2 当期に発生した債権が貸倒れたとき ―― 貸倒損失

まずは一番シンプルなケースから見てみましょう。その期(当期)に発生したばかりの売掛金が、同じ期のうちに回収できなくなった場合です。このとき使う費用の勘定科目が貸倒損失(かしだおれそんしつ)です。

当期発生の売掛金が貸倒れたときの仕訳(借方 貸倒損失/貸方 売掛金)
図 9-1 当期に発生した売掛金が回収不能になったとき。回収できなくなった売掛金(資産)を減らし、同額を貸倒損失(費用)として計上します。

仕訳の考え方はこうです。回収できなくなった売掛金(資産)が減るので、資産の減少は貸方(右)に書きます。その原因である貸倒損失(費用)が発生したので、費用の発生は借方(左)に書きます。左右はもちろん同じ金額でぴったり一致します。

Q. 当期に商品を掛けで売って得意先に対して持っていた受取手形 40,000円が、得意先の倒産により回収不能となりました。この期にはまだ貸倒引当金を設定していません。仕訳を示してください。

A. 回収できなくなったのは当期に発生した債権で、備え(貸倒引当金)もありません。よって全額を貸倒損失とします。

(借)貸倒損失 40,000 / (貸)受取手形 40,000

受取手形(資産)が40,000円減り、その分を貸倒損失(費用)として計上します。売掛金でも受取手形でも、当期発生の債権が貸倒れたときの考え方は同じです。左右とも40,000円で一致しますね。

「貸倒れたら、とにかく貸倒損失」と丸暗記してしまうと、このあとで必ずつまずきます。実は貸倒損失を使うのは「当期に発生した債権」や「備え(貸倒引当金)が足りないとき」に限られるのです。前の期から持ちこしていた債権が貸倒れたときは、別の処理をします。この区別こそが第9章の山場ですので、「いつ発生した債権か」をつねに意識しておいてください。くわしくは第4節でじっくり扱います。

2. 貸倒引当金 ―― 「まだ倒れていないが、備えておく」発想

2.1 決算日に残っている売掛金への不安

決算日(1年の締めの日)に、会社の帳簿にはたくさんの売掛金が残っています。これらは来期になれば回収される予定のものです。でも、ここで冷静に考えてみましょう。「この売掛金、本当に全額回収できるのだろうか?」。過去の経験からすると、どんなにしっかりした会社でも、売掛金のうち何%かは、残念ながら回収できずに貸倒れてしまうものです。

だとしたら、まだ実際には倒れていなくても、「たぶんこれくらいは回収できないだろう」という金額を前もって見積もって、費用として計上しておくほうが正直な決算になるはずです。この「前もっての備え」が貸倒引当金という考え方です。

貸倒引当金の考え方 売掛金の一定割合を見積もって前もって備える図
図 9-2 貸倒引当金の考え方。期末に残った売掛金のうち、過去の実績から「回収できないかもしれない額」を見積もり、前もって備えとして計上します。まだ倒れてはいませんが、備えておくのです。

2.2 なぜ「前もって」備えるのか

「実際に貸倒れてから費用にすればいいのでは?」と思うかもしれません。でも、それでは少し困ったことが起こります。売上を計上した年と、貸倒れが実際に起こる年がずれてしまうのです。たとえば、今年の売上でつくった売掛金が、来年になって貸倒れたとします。すると「もうけ(売上)は今年、損(貸倒れ)は来年」となり、それぞれの年の成績が正しく写せません。

そこで、売上を計上したのと同じ期に、対応する貸倒れの見積りも費用として計上しておく。こうすれば、その年の成績表(損益計算書)が、その年の実態をより正しく表すことになります。これが「前もって備える」いちばんの理由です。

この「まだ起きていない将来の支払い・損失を、見積もって前もって備えておく」という発想は、実はアクチュアリーの仕事のど真ん中にある考え方です。生命保険会社は、将来支払うことになる保険金に備えて責任準備金を積み立てます。これは、まさに貸倒引当金と同じ「見積もりによる備え」の一種で、確率や統計をつかって「将来どれくらい支払いが起きそうか」を計算して積みます。簿記で学ぶ貸倒引当金は、そのいちばんやさしい入口。ここで「引当(ひきあて)=将来に備えた見積もりの計上」という感覚をつかんでおくと、会計の教科書で引当金の章に進んだときも、そして将来アクチュアリーとして準備金を扱うときも、きっと「あのときの貸倒引当金と同じだ」と腑に落ちますよ。

2.3 貸倒引当金は「資産のマイナス」を表す

ここで少し不思議なのが、貸倒引当金という勘定科目の性格です。貸倒引当金は負債ではありません。かといって資産でもない。実は「売掛金という資産を、うしろからそっと減らすための科目」なのです。こういう役割の科目を評価勘定(ひょうかかんじょう)と呼びます。第8章で学んだ減価償却累計額を思い出してください。あれも「建物や備品という資産を、うしろから減らす」評価勘定でしたね。貸倒引当金は、売掛金版の減価償却累計額だと考えると、すっと理解できます。

貸倒引当金は、負債でも資産でもない評価勘定。売掛金や受取手形といった債権を、うしろから減らして「本当に回収できそうな金額」に近づける役割をもちます。増えるときは貸方(右)、減る(取り崩す)ときは借方(左)に書きます。減価償却累計額と同じ性格だと覚えましょう。

3. 貸倒引当金の設定 ―― 差額補充法(繰入と戻入)

3.1 いくら備える? ―― 期末残高 × 見積率

では、具体的にいくら備えればよいのでしょうか。ふつうは決算日に残っている売掛金や受取手形の残高に、過去の実績などから決めた見積率(貸倒実績率)をかけて計算します。

当期末に必要な貸倒引当金 $$\text{必要な引当金} \;=\; \text{期末の債権残高} \;\times\; \text{見積率}$$ たとえば売掛金が500,000円、見積率が2%なら、500,000 × 0.02 = 10,000円 が「備えておくべき額」です。

3.2 差額補充法 ―― 足りない分だけ補う

ここがこの章のもう一つの山場です。上の計算で出た10,000円をまるまる費用にすればよい――とは限りません。なぜなら、前の期にも貸倒引当金を設定していて、その残りが帳簿にまだ残っていることが多いからです。

たとえば、いま帳簿の貸倒引当金が4,000円残っているとします。今年必要なのは10,000円。すでに4,000円の備えがあるのだから、足りない差額の6,000円だけを新たに追加すればよいですね。このように「必要額と現在の残高の差だけを補う」やり方を差額補充法(さがくほじゅうほう)といいます。

差額補充法のイメージ 必要額から既存残高を引いた差額だけを繰り入れる図
図 9-3 差額補充法のイメージ。必要額10,000円のうち、すでにある4,000円はそのまま活かし、不足している6,000円だけを追加します。「必要額 − 既存残高 = 繰入額」です。
差額補充法の繰入額 $$\text{繰入額} \;=\; \text{当期末に必要な引当金} \;-\; \text{設定前の残高}$$ 上の例なら、10,000 − 4,000 = 6,000円 を補充します。

3.3 貸倒引当金繰入の仕訳

不足分を補うときの費用の科目が貸倒引当金繰入(かしだおれひきあてきんくりいれ)です。「引当金に繰り入れる(積み増す)」という意味ですね。相手科目は評価勘定の貸倒引当金で、増えるので貸方に書きます。

差額補充法による貸倒引当金繰入の仕訳(借方 貸倒引当金繰入/貸方 貸倒引当金)
図 9-4 決算での繰入の仕訳。不足分6,000円を貸倒引当金繰入(費用)として計上し、同額だけ貸倒引当金を増やします。

Q. 決算にあたり、売掛金の期末残高800,000円に対して3%の貸倒れを見積もります。差額補充法によること。決算整理前の貸倒引当金の残高は15,000円でした。必要額と繰入額を計算し、仕訳を示してください。

A. まず必要額を計算します。
必要額 = 800,000 × 3% = 24,000円
すでに15,000円あるので、差額補充法での繰入額は、
繰入額 = 24,000 − 15,000 = 9,000円
不足分の9,000円だけを繰り入れます。

(借)貸倒引当金繰入 9,000 / (貸)貸倒引当金 9,000

これで貸倒引当金の残高は 15,000 + 9,000 = 24,000円 となり、必要額とぴったり一致します。左右とも9,000円で貸借も一致していますね。

3.4 残高が多すぎたとき ―― 貸倒引当金戻入

逆のケースもあります。設定前の残高のほうが、必要額より多い場合です。たとえば、必要額は3,000円なのに、帳簿には4,000円の貸倒引当金が残っている。このとき、備えは1,000円分だけ多すぎることになります。この多すぎた1,000円を減らして戻す処理を行い、その相手科目として貸倒引当金戻入(かしだおれひきあてきんもどしいれ)という収益の科目を使います。

Q. 決算にあたり、売掛金の期末残高150,000円に対して2%の貸倒れを見積もります(差額補充法)。決算整理前の貸倒引当金の残高は4,000円でした。仕訳を示してください。

A. 必要額を計算します。
必要額 = 150,000 × 2% = 3,000円
必要額3,000円に対して残高が4,000円もあるので、1,000円多すぎます。この差額を戻し入れます。
戻入額 = 4,000 − 3,000 = 1,000円

(借)貸倒引当金 1,000 / (貸)貸倒引当金戻入 1,000

貸倒引当金(評価勘定)を1,000円減らすので借方へ。相手は収益の貸倒引当金戻入で貸方です。これで残高は 4,000 − 1,000 = 3,000円 となり、必要額に一致します。繰入とは借方・貸方がちょうど逆になる点に注目してください。

繰入と戻入、どちらになるかは「必要額」と「設定前の残高」を比べるだけで決まります。必要額のほうが大きければ足りないので繰入(費用)、残高のほうが大きければ多すぎるので戻入(収益)。迷ったら、図9-3のように「必要額の棒」と「今ある残高の棒」を頭のなかで並べて、どちらがはみ出しているかを見るのがコツです。なお、この章では日商簿記3級の範囲である差額補充法を中心に扱っています。会計の教科書では、いったん全額を戻してから改めて全額を設定し直す「洗替法(あらいがえほう)」という別のやり方も登場しますが、結果として損益に与える影響は差額補充法と同じになります。まずは差額補充法をしっかり手になじませましょう。

4. 貸倒れが起きたとき ―― 前期の債権と当期の債権

4.1 カギは「いつ発生した債権か」

さあ、実際に貸倒れが起きたときの処理です。ここで第1節の警告が効いてきます。貸倒れた債権を処理するときは、まず「その債権はいつ発生したものか?」を確認します。判定はこの一点だけです。

貸倒れた債権が前期以前発生か当期発生かで処理を分ける判定フロー図
図 9-5 貸倒れが起きたときの判定フロー。前期以前に発生した債権なら貸倒引当金を取り崩し、当期に発生した債権なら全額を貸倒損失にします。

なぜこの区別が必要なのでしょう。思い出してください。貸倒引当金は、前期末に残っていた債権に備えて設定したものでした。ということは ――

4.2 前期以前の債権が貸倒れたとき ―― 引当金を取り崩す

前期から持ちこしていた売掛金が貸倒れたら、まず貸倒引当金を取り崩してあてます。取り崩す(減らす)ので、貸倒引当金は借方(左)に書きます。相手は消えていく売掛金(資産)で、貸方(右)です。

前期発生の売掛金が貸倒れたときの仕訳2例(引当金内で足りる場合と引当金を超過する場合)
図 9-6 前期に発生した売掛金が貸倒れたとき。上段は引当金の範囲内で足りる場合、下段は貸倒額が引当金残高を超え、超過分を貸倒損失で補う場合です。

図9-6の上段は、貸倒れた売掛金8,000円に対して貸倒引当金の残高が十分にある(たとえば10,000円ある)ケースです。備えの範囲内なので、8,000円まるごとを貸倒引当金で処理できます。

下段は少しだけ複雑です。貸倒れた売掛金が12,000円なのに、貸倒引当金の残高は10,000円しかない、という場合。備えが2,000円分足りません。このときはまず引当金10,000円を全部取り崩し、足りない2,000円だけを貸倒損失で補います。「備えを使い切って、なお足りない分は損失」という自然な考え方ですね。

Q. 前期に商品を掛けで売って生じた売掛金 25,000円が、得意先の倒産により回収不能となりました。貸倒れの処理をする直前の貸倒引当金の残高は18,000円です。仕訳を示してください。

A. 貸倒れたのは前期に発生した債権なので、まず貸倒引当金を取り崩します。ところが引当金は18,000円しかなく、貸倒額25,000円には7,000円足りません。
不足額 = 25,000 − 18,000 = 7,000円
足りない7,000円は貸倒損失で補います。

(借)貸倒引当金 18,000 / (貸)売掛金 25,000
   貸倒損失    7,000

借方合計 = 18,000 + 7,000 = 25,000円、貸方 = 25,000円で一致します。備えを使い切り、はみ出した分だけを損失にする、というパターンです。

逆に、当期に発生した売掛金が同じ期のうちに貸倒れたときは、貸倒引当金にはいっさい手をつけません。備えはあくまで「前期末の債権」に対して積んだものだからです。この場合は残高がいくらあっても、全額を貸倒損失とします(第1節の図9-1のとおり)。「引当金があるのだから使えばいいのでは」と取り崩してしまうミスがとても多いので、まず発生時期を確認するクセをつけてください。

5. 償却債権取立益 ―― あきらめた債権が戻ってきた

もう一つ、少し珍しいけれど大切な処理があります。過去に「貸倒れた」として処理してしまった債権が、あとになって回収できたケースです。取引先が立ち直ってお金を払ってくれた、というような場合ですね。

すでに貸倒れとして帳簿から消してしまった売掛金は、もう帳簿には残っていません。ですから、回収したお金はまるまる思いがけない収益になります。この収益の科目が償却債権取立益(しょうきゃくさいけんとりたてえき)です。「一度あきらめて償却(帳簿から消すこと)した債権を、取り立てて得た利益」という意味です。

前期以前に貸倒処理した売掛金を回収したときの仕訳(借方 現金/貸方 償却債権取立益)
図 9-7 前期以前に貸倒処理した債権を回収したとき。入ってきた現金(資産)を借方に、思いがけない償却債権取立益(収益)を貸方に計上します。

Q. 前期に貸倒れとして処理していた売掛金のうち12,000円を、当期になって現金で回収しました。仕訳を示してください。

A. すでに貸倒処理ずみの債権なので、帳簿に売掛金は残っていません。入ってきた現金は思いがけない収益として扱います。

(借)現金 12,000 / (貸)償却債権取立益 12,000

現金(資産)が12,000円増え、その原因を償却債権取立益(収益)として計上します。「戻ってきてラッキー」という収益なので、貸倒引当金にも売掛金にも触れないのがポイントです。左右とも12,000円で一致します。

勘定科目の名前が長くて面食らうかもしれませんが、分解すれば意味は明快です。「償却(=帳簿から消した)+債権+取立(=回収した)+益(=もうけ)」。つまり「消したはずの債権を回収して得たもうけ」。名前をパーツに分けて読むと、簿記の勘定科目はぐっと覚えやすくなります。長い科目名に出会ったら、まず分解してみるクセをつけると、暗記の負担がずいぶん軽くなりますよ。

6. 貸借対照表での表示 ―― 売掛金から差し引く

最後に、決算で設定した貸倒引当金が、貸借対照表(B/S)ではどう見えるかを確認しましょう。第2節で学んだとおり、貸倒引当金は「売掛金という資産を、うしろから減らす」評価勘定でした。ですからB/Sでも、資産の側に売掛金の下にマイナスとして並べ、差し引いた金額を示します。

貸借対照表での貸倒引当金の表示 売掛金から控除して差引額を示す
図 9-8 貸借対照表での表示。売掛金500,000円から貸倒引当金10,000円を差し引き、回収が見込める490,000円を示します。マイナスは「△」で表します。

こうして表示すると、貸借対照表を見た人は「売掛金は帳簿上500,000円あるけれど、そのうち10,000円は回収できないかもしれないと会社が見込んでいる。だから実質490,000円くらいだろう」と読み取れます。単に「売掛金490,000円」とだけ書くより、もとの金額と備えの両方が見えるぶん、はるかに正直で親切な表示なのです。

Q. 決算日の売掛金残高が600,000円、受取手形残高が200,000円で、これらの合計に対して2%の貸倒引当金を設定しました。貸借対照表に表示される貸倒引当金の金額と、差し引き後の債権の金額を答えてください。

A. まず引当金の対象となる債権の合計を求めます。
債権合計 = 600,000 + 200,000 = 800,000円
貸倒引当金 = 800,000 × 2% = 16,000円
差し引き後 = 800,000 − 16,000 = 784,000円

貸借対照表では、売掛金と受取手形を並べたうえで、貸倒引当金△16,000円を控除する形で示します。回収が見込める債権は実質784,000円、というわけです。

第8章で学んだ減価償却累計額も、この貸倒引当金とまったく同じ「控除表示」でしたね。建物の取得原価から減価償却累計額を差し引いて帳簿価額を示すのと、売掛金から貸倒引当金を差し引いて回収見込額を示すのは、発想がそっくりです。評価勘定は、もとの金額を消さずに残したまま、マイナスを横に並べて実質の価値を伝える―― この共通のしくみに気づくと、会計の教科書で貸借対照表の様式を学ぶときも、すんなり頭に入りますよ。

💡 第9章 要点まとめ

おつかれさまでした。この章では、貸倒れという「後ろ向きの出来事」を通して、簿記のいちだんと大人びた発想 ―― 将来を見積もって前もって備えるという考え方に触れました。これはアクチュアリーの準備金の発想にも直結する、とても大切な感覚です。次の第10章「株式会社の資本と税金」では、視点を会社そのものに移します。株式を発行して元手を集めるしくみ、もうけを株主に配当するながれ、そして会社が納める法人税や消費税の記録を学んでいきましょう。会社という主役の「お金の一生」が、いよいよ見えてきますよ。

📝 演習問題つきの「学習版」もあります(無料)

この章の内容を、演習問題つきでもう一歩深く学べます。理解度を試したい方はこちら。

演習つき学習版で第9章を学ぶ →

無料会員登録すると、メモや学習時間の記録などの機能も使えます。

← 前の章第8章 固定資産と減価償却 次の章 →第10章 株式会社の資本と税金