経過勘定とは — 前払・前受・未払・未収を4象限で整理する
📅 2026年9月4日 公開
「お金の動き」と「サービスの提供」はズレる
3月決算の会社が、2月に1年分の火災保険料12万円を前払いしたとします。支払ったのは今期ですが、保険サービスを受けるのは来期にもまたがります。払った金額を全部今期の費用にしてよいのか? 答えは「ノー」です。
会計は現金の出入りではなく、その期の活動に対応する収益・費用で利益を測ります(発生主義)。この「お金の動き」と「サービスの提供」のズレを決算で調整するための勘定が経過勘定です。前払費用・前受収益・未払費用・未収収益の4つがあり、決算整理の定番論点として繰り返し問われます。
4象限で整理する — 迷わないための2つの軸
4つを丸暗記しようとすると必ず混乱します。次の2軸で位置づけてください。
| 費用側(払う) | 収益側(もらう) | |
|---|---|---|
| お金が先・サービスが後 (前払い/前受け) | 前払費用 払ったがまだ受けていない → 資産 | 前受収益 もらったがまだ提供していない → 負債 |
| サービスが先・お金が後 (後払い/後受け) | 未払費用 受けたがまだ払っていない → 負債 | 未収収益 提供したがまだもらっていない → 資産 |
覚え方はシンプルです。「前払い・未収は資産、前受け・未払いは負債」。前払いは「サービスを受ける権利」が残っているから資産、前受けは「提供する義務」を負っているから負債——理屈で押さえれば忘れません。
数値例① 前払費用(お金が先)
冒頭の例で確かめます。3月決算の会社が、2月1日に向こう1年分の保険料12万円(月1万円)を現金で支払いました。
- 支払時(2月1日): 借方 保険料 120,000 / 貸方 現金 120,000
- 決算時(3月31日): 今期に対応するのは2月・3月の2か月分=20,000円だけ。残り10か月分=100,000円は来期の分なので、費用から取り除いて資産に振り替えます。
借方 前払費用 100,000 / 貸方 保険料 100,000
結果、今期のP/Lには保険料20,000円だけが残り、B/Sには前払費用100,000円が資産として計上されます。翌期首には逆仕訳(再振替)で費用に戻します。
数値例② 未払費用(サービスが先)
次は逆パターン。12月1日に年利6%で1,000,000円を借り入れ、利息は翌年11月末に1年分をまとめて後払いする契約だとします(3月決算)。
- 今期中(12月〜3月の4か月)はすでにお金を借りているサービスを受けているのに、利息はまだ1円も払っていません
- 年間利息 1,000,000 × 6% = 60,000円。うち4か月分 = 60,000 × 4/12 = 20,000円が今期の費用
- 決算整理仕訳: 借方 支払利息 20,000 / 貸方 未払費用 20,000
まだ払っていなくても、今期に発生した費用として計上する。これが発生主義の考え方です。
経過勘定は「一定の契約に従い、継続的にサービスの提供を受ける(or 提供する)場合」に使われます。保険料・家賃・利息・地代などが典型です。一方、商品の仕入代金を前もって払った場合は前払金、備品を買って代金が未払いの場合は未払金——これらは継続的サービスではないので経過勘定ではありません。「時の経過に応じて発生するかどうか」が見分けの鍵です。この区別は正誤問題で狙われます。
なぜ試験で繰り返し問われるのか
経過勘定は、単なる仕訳テクニックではなく発生主義会計そのものの縮図だからです。「収益と費用は、現金の授受ではなく発生の事実に基づいて期間配分する」——この原則を最も分かりやすく体現しているのが経過勘定であり、企業会計原則の損益計算書原則にも明記されています。会計の知識問題では、この原則的な位置づけと4勘定の資産・負債の区別が問われます。
学習への落とし込み
経過勘定は会計 第4章 利益測定と資産評価の基礎概念で、発生主義・実現主義とセットで学べます。4象限の表を自分で書けるようになったら、類題トレーニングで月割計算の練習を。明日は経済の「余剰分析と死荷重」です。
※ 厳密に言えば(補注)
- 本文では「収益と費用は発生の事実に基づいて期間配分する」とまとめましたが、企業会計原則の損益計算書原則を厳密に読むと、費用は発生主義により発生した期間に割り当て、収益は実現したもの(実現主義)を計上するという建て付けになっています。経過勘定は、この期間帰属を調整するための項目です。
- 翌期首に再振替仕訳を行う処理は実務・学習上の一般的な方法ですが、唯一の方法ではありません。再振替を行わず、決済時に前払費用・未払費用を直接取り崩す処理も可能です。
- 「繰り返し問われる」「正誤問題で狙われる」は、当サイトが実試験10年分(2016〜2025年度)を類題化した集計から見た傾向です。将来の出題を保証するものではありません。
📖 あわせて学ぶ(無料講義・動画)
📚 参考文献・参考リンク
- 桜井久勝『財務会計講義』中央経済社
- Wikipedia「経過勘定」